過去の受賞作品

受賞作品|審査員講評|3次審査風景

審査員講評

関東・関西審査委員長 伊久 哲夫 (積水ハウス株式会社 取締役 専務執行役員)

本コンペも10年目を迎えました。コンペの歴史を振り返ると、この10年で多様なアイデアや提案がなされノウハウが蓄積されています。そんな中で最終的に評価される作品には、過去の応募作品テーマからの「進化」や、まだ世の中で実現されていない「先見性」、学生ならではの「独創性」が備わって欲しいと考えています。本年度の応募作品には興味深いテーマが見られましたが、一方で未消化な作品も多いと感じました。
5月のプレ審査応募に始まり3次審査まで半年間にも及ぶ本コンペの最大の特徴はそのプロセスにあり、リアルサイズで考え創ることを自ら実体験し学ぶことにあります。審査においては各段階における審査員の指摘に対してどのように応え進化成長したか?が大きな評価ポイントであり、その努力が感じられブラッシュアップが確認できる作品が最終的に評価されました。今回悔しい思いをした学生さんは是非リベンジして欲しいと思います。そして本コンペの大きなテーマである「ecoデザイン」、更には人々の生活をより豊かにするための「住空間デザイン」について真摯に取り組み、更なる成長に期待しております。

関西審査委員 遠藤 秀平 (神戸大学大学院 工学研究科 教授)

今年のリアルサイズの成果は精度が高かった。エコをどの様な視点でとらえるか、多様な解答が想定されるが、1/1の成果を作り上げるにはデザインとしての完成度が求められる。プレゼンテーションでは言葉や表現の補足が可能であるが、社会の中で実現すればいかなる説明(言い訳)も通用しない。これがリアルサイズの面白さであり厳しさでもある。そう考えれば「家具の中の家の中の部屋」は、開きとスライドの2通りの可動式アイデアが審査員の心を掴んだに違いない。2.4m立方の空間をどのように使うか、どう設定するかを使用者の裁量に委ねることがデザインの前提となっている、このことがリアルサイズデザインとしての無言の遡及力となった。

関東審査委員 田渕 諭 (多摩美術大学 美術学部 環境デザイン学科 教授)

このコンペは、コメントセッションに始まり、1次パネル審査・2次プレゼン審査を経て最終選考は2.4m立方の原寸模型を作る半年に及ぶ楽しい挑戦である。
今年は最終審査にジャンルの異なる4作品が残った。植生を利用して温度管理を行う温室空間作品。太陽熱の空気膨張を利用し水滴を降らす空間作品。公園の落ち葉を集める空間装置作品。視線を通しながら遮音をする防音壁作品。
自然エネルギーを数値化しデザインに反映していこうとする理科系の分析力と、デザイン系の造形力を融合した作品が目を引いた。日常生活にecoは定着しつつあるが、今後更に社会に還元できるecoデザインが生まれて来ることを願っている。